ニホンウナギは現在でも年間5万トン程度が消費されています。2014年に、養殖に用いるシラスウナギの量を制限することが合意されましたが、科学的な知見に基づかない過剰な上限量が設定されているため、ニホンウナギの持続的利用には結びつきません。
過剰な消費
水産庁によると、2020年には5万1000トンのウナギが国内で消費されています。この中にはニホンウナギ以外の種類のウナギも含まれています。現在の消費が過剰であるのか、という問題については、「過剰」という言葉の定義や比較する時期が定まっていないことから、明確に「過剰」とは言えない、という意見もあります。これに対して、消費の速度が、生物が増える速度を上回っている場合、過剰な消費である、とする見解もあります。
日本におけるウナギ消費量(ニホンウナギ以外の種を含む)
池入れ量制限
ニホンウナギ資源を管理することを目的として、「池入れ量制限」が導入されました。「池入れ量制限」とは、養殖のために養殖池に導入するシラスウナギの量(池入れ量)を制限する規則のことで、日本、中国、韓国、台湾の合意に基づき、2015年シーズンより施行されています。しかしながら、現在の池入れ量の上限は科学的な根拠に基づいていません。現在のニホンウナギの池入れ上限量は、近年では最も池入れ量の多かったとされる2014年シーズンを基準とし、その2割減の78.8トンと定められています。一部の研究者が現在、科学的な根拠に基づいて池入れ量制限を設定する方法について、議論を行っています。しかしながら、いつまでに、どのような形に池入れ量の上限の設定方法を改正するのか、目処は立っていません。
日中台韓のシラスウナギ池入れ量上限と実際の池入れ量(t)
*中国の離脱により、近年の東アジア全体の池入れ量を知ることは難しい
池入れ量制限は資源管理なのか?
現在の池入れ上限量が日中韓台の合計で78.8トンであるのに対し、実際の4カ国・地域の池入れ量合計は2015年が37.8トン、2016年が40.4トンと、制限の半分程度にとどまっているのが現状です。このことは、現在の池入れ量制限が過剰であり、シラスウナギの採捕量を削減する効果を持たないことを示しています。池入れ量制限は、個体数が減少し、絶滅危惧種に指定されたニホンウナギの資源管理と言えるのでしょうか。
根本的な問題は、池入れ量上限の78.8トンが遵守されたとしても、ニホンウナギの持続的利用が実現するわけではない、という事実です。78.8トンという数字は科学的な根拠を一切持たないため、この制限の実現とニホンウナギの持続的利用には理論的な繋がりがありません。ウナギ資源管理の先進地域であるEUでは、「ここまで食べても大丈夫という量を計算することは不可能」との専門家グループからの助言を受け、生き残って次世代を生み出す天然ウナギの量を持続性の指標として使っています。「採って良い量」ではなく「生き残るべき量」を指標としたのです。具体的には、EU域内の水域で、「人間の影響がなかった頃に産卵回遊へ向かったヨーロッパウナギの量を100%と考え、その40%にまで回復させる」という目標を掲げています。あくまでも理屈上のこととはいえ、この目標が達成され、維持されれば、ヨーロッパウナギの持続的利用が実現することになります。これに対してニホンウナギの場合は、理屈の上でも資源管理の体を成していない、というのが実情です。
違法な漁獲と流通