記事

研究の進捗状況や,ウナギに関する動向について投稿いたします。

日本にけるウナギ資源管理政策に関する意識調査の結果を報告する論文が発表されました

フランスの国立研究所INRAEと中央大学による共同研究の一部が論文として公開されました。この研究は、日本政府がウナギ資源管理を進めるにあたり、市民がどのような政策を望んでいるのか、明らかにすることを目的として行われました。

ウナギ資源管理に関する政策について、日本でウェブアンケート調査を行いました。回答者はウナギの現状に関するビデオを見たのち、ウナギに関する政策として、(1)消費の削減(2)代替への移行(3)完全養殖の研究(4)情報提供(5)密輸対策(6)ウナギの値段の増加、についてその賛否を選択しました。質問は明確に賛成か反対かを問うものではなく、現状維持か変更か、という形式となっています。また、一つ一つの政策について選択を迫るのではなく、複数の政策をパッケージとして示し、好みの政策パッケージを選択する形式になっています。

回答者(1088人)全体では、以下のような傾向が見られました。詳しくは論文をご覧ください。

  • 全体としては現状の政策には満足しておらず、政策の付加または改定が望まれている
  • 消費の削減は望まれていない
  • 代替種としてはアナゴが人気(他にサンマ、ナマズ、代替なしの選択肢)
  • 完全養殖の研究を推進することが支持されている
  • エコラベルや啓発などの情報提供が支持されている
  • 密輸への対策強化が望まれている
  • ウナギ蒲焼の値段の増加は望まれていない

書籍「日本のウナギ 生態・文化・保全と図鑑」が出版されます(2024年7月19日予定)

内山りゅう氏によるウナギの生態写真をふんだんに掲載した書籍「日本のウナギ 生態・文化・保全と図鑑」が2024年7月19日に山と溪谷社より出版されます。文章は脇谷量子郎(東京大学)と海部が担当し、日本に生息するウナギについて、その進化的位置、種類、生態、日本における人間との歴史のほか、江戸時代に「美味しい」とされていたウナギの特徴などについて説明しています。詳しい情報は出版社のページからご確認ください。

「日本のウナギ 生態・文化・保全と図鑑」表紙

インドネシア、ジャワ島におけるステークホルダー参加型のシラスウナギ資源評価を報告した論文が発表されました

水産資源を適切に管理するためには、対象種の資源動態を理解することが不可欠です。しかし、日本や北アメリカ、ヨーロッパなど北半球の温帯域におけるシラスウナギ漁業では、IUU(違法・無報告・無規制)漁業と違法取引により、漁業データの収集は困難を極めています。このような状況の中、中央大学、ボゴール農科大学(IPB)、WWFインドネシア、WWFジャパンは、インドネシアのジャワ島において、地域社会と協働した参加型資源評価を通じて、質・量ともに統計分析に十分耐え得るシラスウナギ漁業データを収集することに成功しました。この調査研究は、シラスウナギを漁獲し養殖するインドネシアと、そのウナギを消費する東アジアの両方のNGOと専門家、および幅広いステークホルダーによって実施されました。本研究で開発された参加型資源評価の仕組みは、インドネシアにおけるウナギ管理政策の策定に貢献し、持続可能なシラスウナギ漁業とウナギ養殖を確立する可能性を開きました。今後、日本を含む世界のシラスウナギ漁業のデータ収集の改善に貢献することが期待されます。(中央大学プレスリリースより)

詳しくは中央大学プレスリリース「国際協力によりシラスウナギ漁業のステークホルダー参加型の資源評価が可能に 〜インドネシア、ジャワ島における調査研究〜」をご覧ください。

東アジアにおける、アメリカウナギに対する需要が急拡大していることを報告した論文が発表されました

中央大学の白石広美研究員らによる研究により、養殖を目的とした東アジアへのアメリカウナギ(Anguilla rostrata)の稚魚の輸入が急増しており、絶滅危惧種である同種の資源をさらに減少させる可能性があることが示されました。日本はウナギ消費量の3分の2を輸入に頼っており、その中にはアメリカウナギも多く含まれると考えられます。ウナギの一大消費国である日本には、アメリカウナギを含むウナギ属の持続的な利用の実現に向け、さらなる主導的な役割が求められます。(中央大学プレスリリースより)

詳しくは中央大学プレスリリースをご覧ください。

人工騒音が海洋無脊椎動物に与える影響に関する総説論文に参加しました

スペイン カタルーニャ州の工科大学(Universitat Politècnica de Catalunya – Barcelona Tech PC 略称:UPC)の応用生物音響学研究所が主導した、国際的な研究グループによる文献調査に参加しました。「Frontiers in Marine Science」で公開されたこの研究では、海洋における人間の活動によって発生する騒音が、海洋無脊椎動物および海の生態系にダメージを与えていることが示されました。詳しくはプレスリリース「世界の科学者が警鐘を鳴らす 人為的な騒音が海洋無脊椎動物に与える深刻な影響」をご覧ください。

アメリカが水産物輸入監視制度(SIMP)へのウナギの追加を検討

米国海洋大気庁海洋漁業局(NMFS)はIUU漁業や水産物詐欺を撲滅することを目的として、ウナギを米国水産物輸入監視制度(SIMP)に追加することを提案しています。以下に提案の内容のうち、ウナギに関わる部分を要約しました。実際の提案はこちらのリンクからご覧ください。

  • NMFSは、SIMPへのウナギを含む広範な種の追加とSIMP規則の修正を含む規則案を公表した。
  • SIMPへ追加するウナギは、ウナギ属魚類全16種を対象としている。
  • 提案ではSIMPにウナギを追加する背景として、以下のような状況に言及。
    • 違法な漁獲と取引、マラカイトグリーンなど安全ではない添加物の使用。
    • アジア市場での高い需要とニホンウナギやヨーロッパウナギの資源枯渇によって、アメリカウナギが注目されている。
    • 2022年に密輸が摘発されたヨーロッパウナギは、意図的にアメリカウナギと表示されていた。
    • INTERPOLの報告書によれば、犯罪者によるウナギなどの水産物の搾取が、関税規制の回避、脱税、人身売買、食品偽装など、他の犯罪や行政的な不正と関連している。
    • 2023年12月5日追記:SIMPの対象魚種拡大の規則案が撤回されたという情報が発表されています。
      詳細はNOAAの発表をご覧ください。
  • ご挨拶

    中央大学海部研究室のページです。2017年に旧ページを開設しましたが、2021年に大学のサーバーが移転したこと…


過去の記事については,過去のサイトをご覧ください。

旧研究室サイトへ